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July 28, 2025 8 mins

世界トップクラスの富める国であるシンガポールが、技術革新と市場への影響力を梃子にその地位を高め続ける軌道に乗ろうとしています。今回はその様子について、弊社ASEANリサーチ担当責任者のニック・ロードがお話しします。

このエピソードを英語で聴く。


トランスクリプト 


「市場の風を読む」(Thoughts on the Market)へようこそ。このポッドキャストでは、最近の金融市場動向に関するモルガン・スタンレーの考察をお届けします。

本日はシンガポールの60回目の独立記念日について、そしてこの国が過去最大の変化を遂げそうな10年間に突入しようとしていることについて、弊社ASEANリサーチ担当責任者のニック・ロードがお話しします。

このエピソードは7月28日 にシンガポールにて収録されたものです。

英語でお聞きになりたい方は、概要欄に記載しているURLをクリックしてください。

シンガポールは8月9日に重要な建国記念日を迎えますが、今年のこの日は単なる記念日ではありません。この国の家計資産がわずか5年で2倍近くに増えるかもしれないという、富の創造の新時代が幕を開ける日でもあるのです。そう、この都市国家の家計純資産は現在2兆3000億ドルですが、2030年までにはこれが4兆ドルに増えると弊社では予想しています。

では、次の時代に向かうその原動力は何なのでしょうか。

シンガボールはグローバル資本の避難場所のひとつという位置づけから、イノベーションと影響力の戦略的なエンジンへと進化を遂げようとしています。その原動力は主に3つあります。1つ目は、グローバルなハブとしての役割の増大。2つ目は新しいテクノロジーのいち早く積極的な導入。そして3つ目は、最後だから重要ではないというわけではありませんが、株式市場の再活性化を目指す一連の大胆な改革です。

現在は、これらの3本柱がまとまって、すそ野の広い富の創造をお膳立てしているところです――投資家もそれに気づきつつあります。

シンガポールの人口は600万人にすぎません。しかし、人口1人当たりで見ればすでに世界で4番目に裕福な国になっています。しかも、話はそこでは終わりません。

シンガポールの家計純資産は、2030年までに現在の平均160万ドルから同250万ドルという目を見張る水準に上昇すると弊社では予想しています。運用資産残高(AUM)は4兆ドルから7兆ドルに跳ね上がる公算が大きいでしょう。そしてMSCIシンガポール指数は年10%のペースで上昇し、今後5年間で2倍になる可能性もあるでしょう。シンガポール企業の自己資本利益率(ROE)も上昇しそうです。生産性の向上、市場改革、そして株主リターンの上昇などにより、12%から14%に改善すると思われます。

しかし、ここでシンガポールの成長ストーリーの1本目の柱、すなわちハブのなかのハブになろうという目標に戻って考えてみたいと思います。シンガポールはすでに金融、貿易、運輸の分野で主要なプレーヤーです。つまり、この強みにもっと賭けようとしているのです。

コモディティの分野では、シンガポールが世界のエネルギーや金属の取引の20%を取り扱っていることが分かっており、将来的には、液化天然ガス(LNG)やカーボン排出権の取引のハブになる可能性もあります。また金融サービスの分野では、シンガポールはクロスボーダー資産取引を記帳・決済できる世界第3位の国際金融センターであり、同じく世界第3位のFX取引ハブでもあります。国内総生産(GDP)に[1] およそ 約4%寄与している観光業も、パズルの重要なピースです。この国は世界レベルのインフラ、イベント、アトラクションに投資し続けており、訪問客が――そして彼らのお金が――途切れることなく入ってくるようにしています。

成長の2本目の柱に当たるテクノロジーについては、シンガポールはすべてを賭けようとしています。マレーシアや日本とともに、アジア地域のデータやAIのハブになりつつあります。今後10年間でアジアのデータセンターや生成AIには1000億ドルが投資されると見込まれますが、その最上の部分はこれら3ヵ国に引き寄せられると思われます。

なお、シンガポールはすでに世界の十指に入るAI市場であり、1000社を超えるスタートアップ企業、80の研究施設、150の研究開発(R&D)チームがひしめき合っています。アジアにおける自律走行車のリーダーでもあり、現時点では13車種が公道で試験走行を行う認可を得ています。シンガポールのチャンギ国際空港ではすでにロボットが働いています。

最後に、シンガポールではかつて、経済は好調なのに株式市場には活気がない、少数の大銀行と不動産会社が牛耳っているからいけないのだ、と指摘される時期がしばらく続いたことがありました。しかしこの状況も急速に変わってきており、シンガポールの成長ストーリーを支える第3の柱になりつつあります。

例えば今年、シンガポール政府は市場に新たな息吹を吹き込むべく、全面的な改革を断行しました。税制優遇策の導入、規制の合理化、そして特に中小型株の流動性向上を目指したシンガポール金融管理局(MAS)による40億ドルの資本注入などがその主なところです。

また、上場企業は今後、株主エンゲージメントをもっと高めるように、そしてビジネスプランやバリュー・プロポジションをもっと明確に株主に伝えるように促されるだろうと弊社ではみています。その狙いは、シンガポール企業の株価純資産倍率(PBR)を1.7倍から2.3倍に、すなわち台湾やオーストラリアなど比較的高い評価を受けている市場並みの水準に押し上げることにあります。

さて、こうしたことは投資家にとって何を意味するのでしょうか。

それは、シンガポールが単に過去の偉業を祝っているだけでなく、未来を建設しているということです。賢明な政策、大胆なイノベーション、そして明快なビジョンを通じて、世界で最も活力のある市場に、そして投資に向いた市場のひとつに自らを位置づけようとしているのです。

最後までお聴きいただきありがとうございました。今回も「市場の風を読む」Thoughts on the Market 、お楽しみいただけたでしょうか?もしよろしければ、この番組について、ご友人や同僚の皆さんにもシェアいただけますと幸いです。

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